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キラ星タワービルの屋上にゴンドラが静かに着陸します。ついに船の扉が開かれました。
「グッドアフタヌーン。ごきげんよう!」
陽気な声で、あいさつが。
背の高い、男の人が現れました。黒いタキシード姿で、右手にはつえを持っています。シルクハットをかぶった外国の人でした。
「ワタクシは『黄金の船』の案内人、キラ星伯爵ともうします。今夜、あなた様をおむかえにあがりました」
シルクハットを脱ぐと、深々と頭を下げてきます。
とても優しそうな顔をしています。小学生のケンタに対しても、ていねいに話しかけてくれました。
「ところで、乗船カードはお持ちですかな?」
キラ星伯爵の問いかけに、ぼおっとしていたケンタはあわてて金色のカードを見せました。
口ひげをなでながら、ケンタのカードを確かめた後、キラ星伯爵は握手を求めてきました。思わずケンタも手を差し伸ばし握手をしてしまいます。伯爵の手は、まるでゴムボールのようにヌメヌメした触り心地をしていました。伯爵は握った手をなかなかはなしてくれません。何かを確かめている様子です。
「ふむ、とても冷たい。心まですっかり冷たくなっていますな。これはよろしい」
何もわからないケンタは目をパチクリさせました。
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