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ふう。
ケンタは大きなため息をつくと、腕にだいている一匹の猫をのぞきこみました。
名前はギンといいます。
実は、心配することがあったのです。カエデおばさんは猫がきらいです。長野の家にギンを連れてきてはいけない、と強く言われてしまいました。
ところが、ケンタはギンが大好きでした。友だちに預けようかと迷いましたが、とうとうバス乗り場までだいてきてしまったのです。もし猫を見れば、カエデおばさんは何と言うでしょうか?
「カエデおばさん、きっと怒るだろうな」
これからケンタは長野で暮らしていくのです。だから、ケンタはあまりおばさんに迷惑をかけたくはありませんでした。バスが出発するまで、あと二十分です。けれども、ギンと別れる決心がつきません。弱った顔でずっと猫のギンをみつめるばかり。バス亭に冷たい風が吹き付けてきました。
「寒いや」
ケンタは両手をこすりあわせました。寒いのが苦手でした。これ以上、がまんしていることはできません。夜行バスがやって来るまで、待合室の中で待っていることにしました。
「あれ、何これ?」
ケンタは見つけました。
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