第一話 夜行バス乗り場

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 ふう。  ケンタは大きなため息をつくと、腕にだいている一匹の猫をのぞきこみました。  名前はギンといいます。  実は、心配することがあったのです。カエデおばさんは猫がきらいです。長野の家にギンを連れてきてはいけない、と強く言われてしまいました。  ところが、ケンタはギンが大好きでした。友だちに預けようかと迷いましたが、とうとうバス乗り場までだいてきてしまったのです。もし猫を見れば、カエデおばさんは何と言うでしょうか? 「カエデおばさん、きっと怒るだろうな」  これからケンタは長野で暮らしていくのです。だから、ケンタはあまりおばさんに迷惑をかけたくはありませんでした。バスが出発するまで、あと二十分です。けれども、ギンと別れる決心がつきません。弱った顔でずっと猫のギンをみつめるばかり。バス亭に冷たい風が吹き付けてきました。 「寒いや」  ケンタは両手をこすりあわせました。寒いのが苦手でした。これ以上、がまんしていることはできません。夜行バスがやって来るまで、待合室の中で待っていることにしました。 「あれ、何これ?」  ケンタは見つけました。     
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