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待合室のベンチの上に、金色のきれいなカードが落ちていたのです。だれかが忘れていったのでしょうか。きょろきょろと辺りを見回しても、誰もいません。ケンタはひろうと、声をだして読んでみました。
『黄金の船に乗って、あなたの大切な人と会いませんか?
夜の十二時。
キラ星タワービル屋上でお待ちしております』
そう書かれていました。
裏がえししてみても、あて名や、さしだし人の名前はありません。
「黄金の船?」
ケンタは首をかしげました。
一度、お父さんと海に行ったことはありましたが、『黄金の船』など今まで見たことがありません。なんだかふしぎなカードだなと思いながら、ベンチに戻そうとしたその時です。
ピョン……。
とつぜんでした。
猫のギンがケンタの腕から飛び出してしまったのです。地面におり立ったギンは、ケンタの顔を見ないまま、遠くへ走っていきます。ケンタはあわてました。
「あ、待ってよ。ギン! どこに行くの?」
猫のギンは乗り場からどんどん遠ざかっていきます。
かしこくて優しい性格の猫です。これ以上、ケンタをこまらせないために、ギンの方からさよならをしたのでしょうか?
けれども、ケンタはギンをはなしたくはありませんでした。
急いでナップザックをせおい、金色のカードをポケットにしまいます。ギンを追いかけ始めました。
逃げる猫のギン。
追いかけるケンタ。
「ギン! ギン!」
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