第一話 夜行バス乗り場

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 待合室のベンチの上に、金色のきれいなカードが落ちていたのです。だれかが忘れていったのでしょうか。きょろきょろと辺りを見回しても、誰もいません。ケンタはひろうと、声をだして読んでみました。 『黄金の船に乗って、あなたの大切な人と会いませんか?   夜の十二時。  キラ星タワービル屋上でお待ちしております』  そう書かれていました。  裏がえししてみても、あて名や、さしだし人の名前はありません。 「黄金の船?」  ケンタは首をかしげました。  一度、お父さんと海に行ったことはありましたが、『黄金の船』など今まで見たことがありません。なんだかふしぎなカードだなと思いながら、ベンチに戻そうとしたその時です。  ピョン……。  とつぜんでした。  猫のギンがケンタの腕から飛び出してしまったのです。地面におり立ったギンは、ケンタの顔を見ないまま、遠くへ走っていきます。ケンタはあわてました。 「あ、待ってよ。ギン! どこに行くの?」  猫のギンは乗り場からどんどん遠ざかっていきます。  かしこくて優しい性格の猫です。これ以上、ケンタをこまらせないために、ギンの方からさよならをしたのでしょうか?  けれども、ケンタはギンをはなしたくはありませんでした。  急いでナップザックをせおい、金色のカードをポケットにしまいます。ギンを追いかけ始めました。  逃げる猫のギン。  追いかけるケンタ。 「ギン! ギン!」     
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