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いくら名前を呼んでもギンは止まってくれません。首に巻いたマフラーをなびかせながら、ケンタは必死になって後を追います。お母さんとお父さんに続いて、ギンともはなればなれになりたくなかったのです。
駅の近くにある大きな公園を通りぬけた先に、ギンは長いしっぽを立ててチョコンと行儀よく座っていました。じっと何かを見上げている様子です。
「だめだよ、ギン。勝手にはなれては」
ハアハアと息を切らしながら、ケンタはやっと追いつきました。小さな猫の身体をしっかりとだきかかえます。
一体、ギンは何を見ていたのだろう?
ふしぎに思ったケンタは前を見ました。
そこには、とても高いビルがそびえ建っていました。すぐ近くにかんばんがあります。ケンタは読んでみました。
『キラ星タワービル』。
「あっ!」
ケンタは驚きました。ベンチに戻し忘れていたカードをポケットから取り出します。
カードに書かれていたビルの名前とまったく同じなのです。
『夜の十二時にお待ちしております』
とカードには記されてありました。
けれども、ビルはまっ暗。すっかり静まりかえっています。建物の中に人がいるとは思えません。
(誰も待ってはいないよ。きっとイタズラだったんだ)
気味悪く思ったケンタは、ギンを大事に抱いたまま、新宿駅の乗り場へ引き返そうとしました。
すると、その時でした。
ピカッ!
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