第一話 夜行バス乗り場

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 タワービルの一階にあかりがついたのです。続いて二階、三階と……順々にあかりがつき始めます。光が下から上へ。まるで打ち上げ花火のように、一つずつのぼっていくのです。  ケンタは腕時計を見ました。  あと五分で十二時になります。  まっ暗だったビルが明るくなったのは、『黄金の船』がやってくる合図なのでしょうか。 「黄金の船に乗って……」  自然とお母さんの顔がうかんできました。  けれども、ケンタは『黄金の船』ではなく、長野行きのバスに乗らなくてはならないのです。 「どうしよう?」  弱った顔でギンを見ました。  ニャア。  ひと鳴きしたギンはまたしてもケンタの腕から飛びおりました。そのまま明るくなったタワービルの中へと入ってしまいます。  ギンには会いたい人がいるのでしょうか?  ケンタも本当はお母さんに会いたいのです  けれども、ここに港はありません。船なんか来るはずは無いのです。 「待ってよ。ギン!」    ケンタはかけ足でギンを追いかけていきました。  明るくなった輝くタワービルの中へと。
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