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第二話 サクラ子
二
エレベーターに乗って。
ケンタとギンは、そのままキラ星タワービルの屋上へとたどりつきました。
ビュルルルル……。
屋上に出ると、冷たい風が吹いてきました。とても強い風でした。
ケンタの首に巻いていたマフラーは、あっという間に飛ばされてしまいます。首にぶら下げてあったペンダントも外れてしまいました。丸いペンダントは屋上に落ちると、そのままコロコロと転がっていきます。
ケンタはあわてました。お母さんの大事な形見なのです。決してなくすわけにはいきません。急いでペンダントをひろおうとします。
けれども、風に押されたペンダントは先へ先へと転がるばかり。
「待ってよ」
ケンタは泣きだしそうな顔になりました。
だれかに助けてもらいたい気持ちでいっぱいです。
すると、どこからともなく声が聞こえてきました。
「まったく、だらしのないやつだな」
ケンタは顔を上げました。いつの間にか、屋上の真ん中に誰かが立っているのです。
転がるペンダントは、その人の足元で止まりました。
女の子でした。
ケンタよりも少し年上ぐらいでしょうか。セーラー服を着ています。寒い夜なのに、コートも着ていません。
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