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きりっとした顔立ちで、オカッパの頭。けれども、ケンタのよく知らない人でした。女の子はひろい上げたペンダントを、ケンタに差し出してくれました。女の子の手はとても白く。透き通るような肌をしていました。
「しっかりと服の中に入れていないから、風に吹き飛ばされるのだよ」
ペンダントを受け取ったケンタはお礼を言いました。
女の子の名前は、サクラ子といいました。
あまり聞かない、めずらしい名前です。
「ねえ。おねえさん?」
「なにかね?」
「おねえさんも『黄金の船』に乗りに来たの?」
おそるおそるケンタはたずねました。
こんな夜おそくにビルの屋上にいるなんて不思議です。この女の子も黄金のカードをひろったにちがいない、とケンタは思ったからです。
けれども、サクラ子は首を横にふりました。
「いや。そうではない」
「じゃあ、どうして? 屋上にいるの?」
「ケンタ、おまえが船に乗るのを止めにきたのだよ」
「ぼくを?」
サクラ子の話し方はとても変わっていました。
それに、ケンタの名前まで知っているのです。ふしぎでした。
「おまえは、長野行きのバスに乗るのだろう。早くバス停に戻らないと乗りおくれてしまうぞ」
「そうだけど……どうして知っているの?」
ケンタは目をパチクリするばかりです。
ふふん、とサクラ子は鼻をならします。とくいげに右手を腰に当てました。
「アタシは何でも知っておるのだ。ウフフ」
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