第二話 サクラ子

2/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 きりっとした顔立ちで、オカッパの頭。けれども、ケンタのよく知らない人でした。女の子はひろい上げたペンダントを、ケンタに差し出してくれました。女の子の手はとても白く。透き通るような肌をしていました。 「しっかりと服の中に入れていないから、風に吹き飛ばされるのだよ」  ペンダントを受け取ったケンタはお礼を言いました。  女の子の名前は、サクラ子といいました。  あまり聞かない、めずらしい名前です。 「ねえ。おねえさん?」 「なにかね?」 「おねえさんも『黄金の船』に乗りに来たの?」  おそるおそるケンタはたずねました。  こんな夜おそくにビルの屋上にいるなんて不思議です。この女の子も黄金のカードをひろったにちがいない、とケンタは思ったからです。  けれども、サクラ子は首を横にふりました。 「いや。そうではない」 「じゃあ、どうして? 屋上にいるの?」 「ケンタ、おまえが船に乗るのを止めにきたのだよ」 「ぼくを?」  サクラ子の話し方はとても変わっていました。  それに、ケンタの名前まで知っているのです。ふしぎでした。 「おまえは、長野行きのバスに乗るのだろう。早くバス停に戻らないと乗りおくれてしまうぞ」 「そうだけど……どうして知っているの?」  ケンタは目をパチクリするばかりです。  ふふん、とサクラ子は鼻をならします。とくいげに右手を腰に当てました。 「アタシは何でも知っておるのだ。ウフフ」     
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加