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そこで、ケンタは物知りそうなサクラ子に、金色のカードを見せてみることにしました。
「船に乗って大切な人と会えるって、書いてあるけど……本当なのかな?」
サクラ子は、ケンタが差し出してきたカードを受け取らずに、のぞきこみます。読みおわった後、ケンタに向かってしつもんをしてきました。
「おまえは、だれと会いたいのだね?」
「お母さん……だよ。だって、お母さんいきなり事故で死んじゃって……だから」
おずおずとケンタは答えました。すると、はっきりした声でサクラ子はたずねてきました。
「死んだ母親に会えると思うのかね?」
「わ、わからないよ」
「ふん」
「でも、会えるんだったら会ってみたいじゃないか!」
「なるほど。それで、会ってどうするのだね?」
「そんなの……そんなのわからないよ」
ケンタの声はさびしそうでした。
「そうか。だがな、『黄金の船』になど乗ってはいけない。お前はだまされているのだよ」
サクラ子はまじめな顔で止めてきました。
けれども、不思議です。
ダメと言われれば言われるほど、ケンタは『黄金の船』に乗りたくなってくるのです。
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