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ケンタは、サクラ子をだまったままにらみます。『黄金の船』に乗れば、大切な人と……おかあさんと会えるかもしれないのです。なのに、どうしてサクラ子は船に乗るな、と止めてくるのでしょうか?
しばらく考えていたケンタでしたが、あることが思い浮かびました。
勇気を出してサクラ子に大声で言い返します。
「わかったぞ!」
「なにをだね?」
「きっと船に乗れるのは一人だけなんだ!」
「ほほう?」
「サクラ子さんこそ、本当は『黄金の船』に乗りたいんだ!」
ケンタがさけんだ時でした。
とてもまぶしい虹色の光が……。
タワービルの屋上にふりそそいできました。ボォンボォンと騒がしい音も聞こえてきます。
(なんだろう?)
ケンタは夜空を見上げました。
いつのまにか、大きな風船が頭の上に浮かんでいるのです。
丸くて細長い、まるでラグビーボールのような形をした風船です。灰色の曇が広がる夜空に、金色にキラキラとかがやいています。
「ねえ、あれは?」
「飛行船という乗り物だな。これはまた、ずいぶんと懐かしいな」
サクラ子は目を細めました。
それは巨大な飛行船という乗り物でした。
どうして、海がないのに船が来るのだろう? と今までふしぎに思っていたケンタでしたが、まさか飛行船が飛んで来るとは思いもしませんでした。
時刻は、ちょうど夜の十二時。
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