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パラレルワールド
私はコンカラキンノキンと死にたい。
爽やかな涼風に吹かれたて湖面に出来たさざ波の様にたなびく黄金の稲穂の群中に白亜のシャトーが聳え立っていた。
「さて、何からお話しましょうか。」
突然、私の右肩越しから低い男の声がした。驚いて振り向くとそこには見知らぬ男の横顔があった。
慌てて辺りを見回した。
「車の中?」
どうやら私は車の助手席に座っている様だった。
フロントガラスの向こうには、尖がり屋根の三本の塔を構えたバイエルン辺りにありそうな白亜の城がでんと聳え建っていた。良く見ると、屋根はけばけばしい赤色で、白い壁もところところ黒ずんでいたり剥げ落ちたりしてる。それはまるで昭和の頃に片田舎によくあった遊園地の様に見えた。
城の一階の中央には、何かを隠しているのだろうか高さ2メートル程の緑に生い茂った木が植えてあった。
松?
針葉樹は針葉樹だが・・・
北欧の城には不釣り合いな純和風の枝っぷりの良い松の木だ。
車はその前の広場に止まっていた。
その広場は白い塀に囲まれていた。左右を見渡すと広場の右角に一台の赤い自販機があるのが目に入った。
やっぱり、遊園地か?
城は日の光を浴びて、純白に輝いていた。
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