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ふ、と見た鏡の中の自分に、違和感に似た気持ちの悪さを感じる。
化粧は……ばっちり。
きっちり今日も詐欺メイク決めて、いい感じ。
「髪型が変なのかな?」
バタバタ動き回ったからか、あほ毛がでて前髪もぐちゃぐちゃになっている。
前髪をそっと引っ張ってみて、目の高さと比較する。
いつもより伸びた前髪。
切ってみようかと思い立ち、洗面台へ移動してハサミを持つ。
鳥がもし時が動き出したときに、移動させた位置から動くと仮定したら、私の切った髪はどうなるのだろうか。
切った、この状態を保ったままなんだろうか。
もし、そうだとしたら。
すうっと、ハサミの冷たさが指を伝って胸に染みたような気がした。
「よし、これでおっけー」
程よい長さに切り終えて、チラシの上に乗った髪はチラシごと丸めてゴミ箱にシュートする。
ハサミは髪の毛がついてないことを確認してポケットへ。
レインコートとタオル、水をいれた水筒とをリュックに詰め込んで持って、プチ遠足気分で玄関へと急ぐ。
私が触れていると生き物は動く。
髪も切れた。
だったら。
ポケットのハサミを撫でつつ、玄関のドアを開けた。
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