Case.4 time after time-1 衝撃の再会

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「何だと、このクソババ猫が」 「誰がババアか、この洟垂れが」 「ババアだなんて言ってねぇだろ、『クソ』と『猫』が抜けてるぜ。遂に年相応に耳が遠くなったのかよ」  直後、ある種低レベルな言い争いにピリオドを打とうというかのように、何かを叩き付けるような派手な音が店内に響いた。  二人が同時に視線を向けた先には、女性と思える人物が一人、うずくまって落下の衝撃に震えている。 「……臨休の予定だったのに」 「仕方ない。店に誰かがいれば、転送された魂は割り振られる仕組みだからな。雨月よ、仕事だ」 「言われなくても」  はあっ、と重い溜息と共に、雨月は女性に歩み寄った。 「大丈夫ですか?」  ビジネスモードに口調を切り替え、女性に手を差し伸べる。  しかし、いつも来る自殺未遂者と同じように、この女性も打撃による痛みを(こら)えるので精一杯らしい。『大丈夫じゃない!』を代弁するかのように、彼女の掌が床をバンバンと叩いた。 「では失礼いたします」  断りを入れた雨月は、女性の身体をヒョイと(かか)え上げる。瞬間、彼女を取り落としそうになった。  他方、突然抱き上げられた女性のほうは、驚きで痛みを忘れたのか、やはり目を見開いている。 「――……あの……」  雨月の驚愕の表情とやや長過ぎる沈黙に、女性は訝しげに小首を傾げた。だが、雨月のほうは彼女の反応に頓着する余裕はない。 「……春風(はるか)……」  無意識に口から滑り出たのは――死した時から決して忘れることのできない名前だった。
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