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山賊のねぐらである洞窟は、すぐに見つかった。
「なんだぁ、てめぇは!」
見張りだろうか。
無精ひげを蓄えた大柄な男が、孫兵衛を見つけ、近づいてくる。
「ここに、何の用だ!」
距離にして、三間。
一足飛びに間合いを詰めると、孫兵衛は居合いで相手を両断した。
声もなく、男は倒れ伏す。
孫兵衛は、そのままするすると滑るように、洞窟に踏み込んでいく。
目に入ったものに対し、機械的に刀を振るう。
山賊たちを次々と屠っていったが、なにしろ数が多い。
最初は混乱していた山賊たちも、徐々に事態を把握し、反撃し始める。
孫兵衛の、息が切れてきた。
孫兵衛は、山賊たちの連携の中心を見定めようと、目を凝らした。
いた。
山賊たちに指示を出している、一人の男。
若い。
その男に向け、孫兵衛は足を踏み出す。
途中、何人かの山賊が孫兵衛を遮ろうと、向かってきた。
全てを斬り伏せたが、孫兵衛の方も何箇所か手傷を受けた。
男が山刀を抜く。
かなりの手練れだ。
二、三度打ち合う。
すでに、孫兵衛の腕の感覚はなくなっている。
男の山刀が、孫兵衛の腹から背中を貫いた。
同時に、孫兵衛の刀は男の両眼を斬り裂いていた。
どう、と孫兵衛が倒れる。
にぃ、と口の端から血を滴らせ、言った。
「奪ってやったぞ、貴様の未来を」
次の瞬間、山賊たちの刀や槍が、孫兵衛の老いた肉体を刺し貫いた。
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