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「おいっ……!!」
異様な殺気に気が付いたのかケンジは声を挙げ、間一髪のところでコハルの刃から逃れた。椅子から倒れ体を強く打って青ざめた顔でケンジはコハルを見上げた。
「な、何すんだよ……!!」
「ちっ……!!」
舌打ちをしたコハルは尚もケンジに狙いを定め包丁を突き刺そうとしたのだ。それに対し咄嗟にケンジがとった行動は、自身と共に倒れた椅子を掴み、倒れた姿勢でありながらも思いっきりコハルを横から、それはまるで野球のスイングの様に薙ぎ払ったのだ。
線の細いコハルはいとも容易くその場の机や椅子を巻き込み吹き飛ばされた。
「きゃぁ!!」
近くの席のヨシノは悲鳴と共に立ち上がり窓にへばりつく様に二人から距離を取った。ヨシノに続くように生徒達は皆ガタガタと椅子から立ち上がり、ケンジとコハルから距離を取ったのだ。
サキもそれを見習うかの様に壁際に寄った。横の席に座っていたカナコが震える体でサキに抱き付いて来たが、サキはそんな事は気にならず、事の二人から目を離すことは無かった。
教室後方に吹き飛ばされたコハルはよろよろとそれでも立ち上がろうとした。だがケンジはそれを許すことなくコハルを今度は蹴り倒し、仰向けのコハルの右腕を思いっきり踏んだ。
「い……! ぎゃ! あぁっ!!」
ボキっと骨が折れたであろう鈍い音がした。コハルは叫び声を挙げその右手から包丁を離した。
痛みに苦しむコハルをケンジは青ざめ息の上がった顔で見下した後、教室後方ロッカーの上に視線を移した。そこには鉈や斧、サバイバルナイフなどの様々な危険物が綺麗に並べられている。ケンジはその中から手の届く範囲にあった鉄パイプを掴んだ。
コハルは窓の方に視線を巡らせ、痛みのせいなのかそれとも別の事なのか涙を流しながら口を開いていた。だがその声は誰に届く間もなく、ケンジは一心不乱にコハルへと鉄パイプを叩きつけたのだった。
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