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「カナコ……」
「なに? サキちゃん」
廊下の先のカナコは振り返りいつものようにサキに笑顔を向けた。だがその顔には少しの疲労感が滲んでいた。
サキは歩みを止め拳を握り、唇を噛んだ後震える声で小さく呟いた。
「ごめんカナコ、私やっぱり生きていたい」
「……」
「初めにコハルが殺されるところを見た。ニナは私の目の前で自殺した。二人だけじゃない。リュウノスケの死体を見た。アキトもケンジもシュウも死んだ。誰かに殺された」
サキは目を瞑り下を向き拳を更にきつく握った。カナコは笑みを浮かべたままサキの言葉を聞いている。
「そうだね。あたしも生きたい。誰かに殺されたくなんてない」
「だからごめん。私、カナコの為に死んであげられない。カナコの目的が何かは分からない。だけど私、こんなところで、あんな風に惨めに死にたくない!! 惨めになんて、死にたくないの!」
「なにが言いたいのか分からないよ」
光の宿った目でサキは必死にカナコに訴えかけた。カナコは相変わらず笑みを称え首を傾げた。
「……理由。カナコはどうしてここに連れて来られたの?」
「そんなことサキちゃんに関係ないじゃん」
「関係はない。だけど知りたい。私はカナコの事をなんにも知らない。カナコが私に目を付けた理由は薄々分かるよ? 私が無気力だからでしょ?」
「あたしはサキちゃんの口から直接聞きたいな。その理由ってのを。ねぇ、死にたがりのサキちゃん」
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