53人が本棚に入れています
本棚に追加
カナコは口元に手を当てクスクスと声を漏らした。
「私はずっとカナコをすごい人だと思ってた。よく他人を見ている人だって。私の事もすぐに分かったんだって感心してた。だからごめん。私はもうカナコの思う私じゃない」
「それは残念だなぁ。サキちゃんにはあたしの為に尽くしてもらおうと思ってたのに」
――早く……。早く……。早く終わりたい……。私に意味を――
サキは頭の中で響く自分の声に耳を傾けた。何度も何度も聞こえてくる声。苦しそうな悲しそうな今にも泣きだしそうなそんな声を聞き続けていた。
初めはどうしてそんな声が聞こえるのかサキ自身にも分からなかった。だが年月が経つにつれてその意味をサキは理解した。
「初めはそのつもりだった。私はカナコの言う通り死にたがり。生きる事に飽き飽きしてた。私なんか居ても居なくても同じだし、社会にとって重要な人物でもない。私の代わりなんていくらでも居る。じゃあ私は何のために生きているのか、それは今でも分からない。意味の無い人生を早く終わらせたかった。だから意味を、条件を求めた」
――死ぬとき私は意味を持って死ぬの!! 私はどこも悪くなんてない! 勝手な意見を私に押し付けないで! 勝手に生きていることが正しいなんて言わないで!! 私は正常な意思で死を肯定しているの!――
最後にサキが両親に述べた言葉だ。
最初のコメントを投稿しよう!