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両親に無理矢理通わされていたカウンセリングでサキはついに両親への苛立ちを爆発させた。
死を願う娘に両親は手を焼いていた。母は泣き崩れ父は激怒していた。そんな両親に対しサキもどうして理解してくれないのかと不満を募らせていた。人は一人一人違う。そんな単純な事がどうしてこの両親は受け入れられないのかサキには理解できなかった。そして絶望した。
人は一人一人違う。それなのに理解して欲しいと認めて欲しいと願った。勝手だとサキ自身も思っていた。違うからこそ分かりあえないのに、幼子の様に駄々をこねた。理解される努力もせずに両親を責め、傷つけた。
全てから逃げ出したかった。痴態をこれ以上晒す前に終わらせたかった。他人に全てを押し付けて消えてしまいたかった。
そうして気が付けばサキは見知らぬ教室で眠っていた。左の手首には数字が刻まれていた。
「条件?」
「そう。私は無駄死にはしたくない。誰の目もないところでひっそり死ぬなんてまっぴらだ。私は誰かの為に、何かの為に死ぬことを望んだ。最期ぐらい意味を持ちたかった。真っ当な理由にかこつけて自分の命を自分で捨てようとした。それが愚かしい事だって言うならそれが連れて来られた理由だと思う。だからこのゲームは私の条件にうってつけだった。私を殺すことで誰かが生きられる。それって素敵じゃない? 私は死んでもその人を生かせるんだから」
―― 生贄だって、カナコが誰かを殺してまで生きたいと思うなら私を殺せばいい――
あの時、その言葉に嘘偽りはなかった。サキは出会って間もないカナコの為に死んでもいいと思っていた。
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