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「じゃああたしの為に死んでくれるよね?」
カナコは首を傾げながらサキに問いかけた。サキは首をゆっくり横に振った。
「ごめん……。私、皆の死に様を見て惨めだって思った。こんなところで死ぬなんて、誰かに踊らされて理由もなく死ぬなんて惨めだって。誰かの為であろうと死にたくないって思ってしまった! 意味なんて無くてもただ生きたいって思ってしまったの!! 惨めになんて死にたくない!! 本当はまだまだやりたいことがある! 真っ当に生きたい!! 生きていたい!!」
そう叫んだサキにカナコは速足で近づき、彼女の首に手を掛けた。
「信じてたのに、酷いじゃない」
「くっ……!!」
少しずつ力の入っていくカナコの手を必死で掴みサキは抗った。カナコの顔からは笑みが消え去っていた。
「ねぇ、サキちゃん。あたしも人を殺したくなんてないんだよ。言ったでしょ? あたしには覚悟が無いって」
カナコはサキの首から手を離しそのままサキを廊下に押し倒しサキの上に馬乗りになった。
「うっ、ゲホッ、ゲホッ!」
「人を殺してこのまま普通に生きられると思う?」
「おも、わない」
このゲームで人を殺して生き残ったとして、その経験はじわじわと精神を蝕んでいくであろうことは容易に分かった。そんな秘密を抱えたまま社会で上手くやっていけるとは思えない。全てを公にしたところで人生をやり直せるとも思えない。
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