Day6-2

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 「だよね。だからあたしにサキちゃんを殺させないで」  「それは、できない」  「それじゃあやっぱり死んで」  カナコは制服のポケットから鞘に入った小さな果物ナイフを取り出した。鞘からナイフを取りだし、それを片手で持ち掲げた。  「教えてあげるよ。あたしはね、最低な人間なんだよ。どんなことがあってもあたしは自分が一番大事なの。あたしは親友を見殺しにした。いじめられてた親友に相談されて冷たく突き放した。ずっと仲良かったのに。一緒の高校に入ろうねって約束して一緒に受験頑張って受かって。あの子はね、いじめに耐えられなくて死んだの。首を吊って。きっとあたしの事恨んでる」  「なんで」  「助けなかったのか? って聞きたいんでしょ? だってあたし、いじめられたくないもん。あの子の事は好きだったけど、だからってあたしまで高校生活台無しにされたくない。個人の問題にあたしを巻き込まないでほしい。そりゃあたしも人間だから、あの子が死んだときは後悔したよ。どうして助けてあげなかったんだろうって。……でもね、分かったの。過去に戻れたってあたしはあの子を助けない。あたしは薄っぺらくて最低のクズだから。どれだけ大事な人でも、天秤にかければあたしは自分の身が一番大事。結局あたしは何度でも同じことを繰り返す」  カナコは果物ナイフをサキの左手に向かって振り下ろす。だが、サキは抵抗を示しカナコの手を右手ではたいた。はたいた事で軌道はずれ床とナイフが擦れ合う音が響いていた。
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