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「お前は、悪魔だ」
「悪魔? 俺は人間だけど? 俺を悪魔だというならこの世界の人間の大半はそうだ。あんたが言うように俺が悪魔なら俺を悪魔にしたのは人間だぜ? 俺だってあの時殺されかけなけりゃこんな人間にはならなかったと自分でも思う。ああ、思い出しただけでもあんたらを殺したくなる。俺を殺そうとしたあの男は、俺の首に手をかけ悦に浸ってた。そんなに愉しい事なのか、喜びを感じられるものなのかって気になって気になって仕方なかった」
「お前は……! 自分も殺されかけたのにどうして平気で人を殺せるんだ!? 痛みも苦しみも分かるはずだろ!」
「あんた質問ばっかだな。逃げないんだ? まぁ俺も本来話すの好きだからいいんだけどよ、痛いのも苦しいのも弱いのがいけないんだ。弱者は強者に全て奪われる。それだけの事だろ? 俺は強者になりたかった。ただそれだけ。弱者の気持ちなんて考えても意味はない」
「そんな、そんなつまらない理由で?」
「あ?」
ナルミの後ろに隠れていたマミコは唇をわななかせた。
「そんなつまらない理由でリュウを殺したの!? リュウは弱くなんてない!! あんたの勝手な理屈で殺されていいはずなかった!!」
「弱いから死んだんだろ?」
「本当に強いなら弱い者を助けるべきよ!! リュウはそうだった!! あの人は強かった! いつも私を助けてくれた!! 私が弱いから、簡単に折れてしまうから、挫けないようにいつも支えてくれた!! 私はそれに甘えてしまった! だけどもう甘えたりなんてしない! あんたは強くなんてない!! あんたはただの子どもよ!! 自分の痛みも他人の痛みも分からない、分かろうとしない弱い人間!!」
「俺は弱くなんかない!!」
マミコの言葉に怒りを露わにし、アオは二人に向かって駆け出した。ナルミはマミコの手を引きアオをかわすと教室後方の扉から廊下へと逃げ出した。
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