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--では始めましょう。愚かしくも愛おしい者達のゲームを――
「ひっ……! いぎゃぁぁ!!」
少女の叫びに呼応するようにその場に居た者達はただ1人を除き、慄き後退り硬直した。
「あ、あああ……! お、俺のせいじゃない!! み、見てただろ……? この女が俺に襲い掛かって来たんだ。そうだ。正当防衛だよ」
血の滲んだ鉄パイプを持ち少年は青ざめた顔で、無理矢理笑みを浮かべた。
少年の足元にはもう頭の原型を留めていない少女が横たわっている。脳ミソは飛び散り赤と混ざりあっていた。眼球は窪み漆黒と化していた。
先ほどまで動いていた少女はもう動くことは無い。それを目の当たりにした少年少女達は息を飲んだ。
小刻みに震え涙を浮かべる者。首を傾げながらその光景をじっと見る者。ただただ硬直し動けない者。
そんな彼等の心境を知ってか知らずか、シンと静まり返った教室に拍手の音が響いた。
鉄パイプを持った少年が一早く音の鳴った方へ振り向いたのを機に、全員がそちらへと視線を向けた。
向けた先は黒板の前の教壇。そこに立つ赤髪の女性はうっとりとした笑みを浮かべ尚も拍手を称えた。
「素晴らしいですわ。ケンジさん、そして残念ですがよく頑張りました、コハルさん。さぁ皆さんも、早速お手本を見せてくれたお二人に拍手を」
尚も笑みを浮かべ拍手を送り続ける赤髪の女性にその場の空気は冷えて行った。
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