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「……ねぇ、どうしてそんなに普通にしていられるの?」
サキは先ほどから感じていた違和感をカナコにぶつけた。昨日あんなことがあって、人が目の前で死ぬのを見てどうして普通にしていられるのか、サキには理解できない。サキは朝食もろくに食べたいと思えなかったがカナコは普通に食している。それに見ず知らずの他人を一カ所に集め話をしていた。
「……普通にしてないとやってられないよ。ほら見て、昨日の事思い出したら手、震えて来た」
そう言ってカナコが差し出した手を見ると、それは小刻みに震えていた。
「ごめん。そうだよね。まだ怖いよね」
「訳わかんないよ。なんでこんな事になってるのか。なんで昨日の二人はあんな風に人を殺せたのかな。結局返り討ちに合っちゃったけど、あの女の子体格差だってあるのにどうしてあんな事出来たんだろ?」
「私も昨日考えてた。コハルって子あのケンジって人の事恨んでたんじゃないかな? すごい形相だったし」
「知り合いって事?」
「でもケンジはコハルの事知らなさそうだった。……ていうか、カナコ、コハルと同じ学校じゃないの?」
サキはカナコの制服を見て少しばかり動揺した。昨日の映像が頭の中で浮かんだのだ。
カナコの来ている制服はコハルと同じ物だった。
「あ、ああ。制服同じだよね。あたしも思ってた。でも知らない子だよ。クラスは違うし、学年も違うかも。とにかく知り合いではない。知ってたらそれこそこんな風に朝ごはん食べられないし」
「そっか。誰か知ってる人って居るの? 昨日あの赤髪の人がそんな事言ってたでしょ?」
「あたしは全く知っている人は居なかった。サキちゃんもでしょ?」
「え、うん。私も全く知らない人ばかりだった」
「やっぱりね。そんな感じしたんだ。だから声掛けたってのもあるし」
「周りの事よく見てるんだ」
「訳わかんなくて昨日。とりあえず現状把握しないとって思って、皆の事見てたらあんなことが起きて……。あたしが分かった範囲の情報教えるよ」
カナコは立ち上がり、サキに食堂を出るように勧めた。
時刻は八時五十分。
「ちょっとゆっくりしちゃったね。ここから離れよう」
サキもカナコの意見に同意し二人は食堂を後にした。
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