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数分前。
――サキ、サキが悪いんじゃないのよ。病気がそうさせるの。だから、ね? また病院へ行きましょう。そう、すぐに治るものじゃないってお医者様も言っていたでしょう? だから今日も行くのよ。行かなければいけないのよ。さぁ、早く支度をして! これ以上お母さんを困らせないで!!――
母の金切り声が頭で響き、少女サキは目を覚ました。
「学校?」
見覚えはない。どうして自身が学校に居るのかも分からない。
知らない場所ではあるが、その空間には黒板や机、椅子など、教育現場でよく見かけるものが揃っていた。窓の外は暗い。
その他にサキが目にしたものは、教壇に立つ赤髪の女性。自身と同じように椅子に座り机に伏して眠る少年少女達であった。座席はサキを合わせて十三席、その十三席に欠員は無い。この部屋には十四人居ることとなる。
サキは扉側の前から二番目の席に座っていた。
「おはようございます」
教壇に立つ赤髪の女性が、艶かしい笑みを浮かべそう言ったのを機に机に伏していた少年少女達は次々と目を覚ました。
「は……? どこだよここ?」
そう言った茶髪の少年に続くように皆、朦朧とした意識を覚醒させ、不安げに辺りを見渡していた。
誰もこの場所に見覚えが無いようだ。
騒めきだした教室内をぼんやりとサキは見渡した。何の変哲もない一教室にしか見えない。
「ここは、学校です。私は貴方達の担任です。貴方達は私の生徒です。貴方達にはゲームを行ってもらいます。その会場に選ばれたのがこの学校です」
箇条書きされた原稿を読むように、担任と称した赤髪の女性は淡々と話し始めた。
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