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淡々と恐ろしい事を言う担任教師にサキは唾を飲み込んだ。口内が渇いていた。言っている事の意味が理解できなかった。
今まで普通の生活を送ってきたサキは、誰かの死に触れた事も無ければ誰かを殺したいと思ったこともない。第一自身が誰かを殺す、という点において考えれば胸が気持ち悪くて仕方がないのだ。
例えば人の肉を刺す感触。例えば殴る感触、それにより跳ね返ってくる他者の肉体の弾力。例えば首を絞める感触。サキには思いついた想像ですら人を殺す事など胸が気持ち悪くて出来ないのだった。
だがこの場所に居る事を怖いとは思わなかった。現状から逃げたいとも思わなかった。そう思うだけの資格が自分には無いのだとサキは思ってしまった。
「ナンバーは特殊な染料で皮膚に描かれていますので、ゲーム期間中は落ちることはありません。お風呂にも安心して入ってください。あと、ナンバーが刻まれている場所は、過去に各自の犯した愚かしい行為と関係しています。これは重要なヒントですね。先ほど一人以上の生贄を捧げるようにと言いましたが、生贄のカウント方法をお伝えします。直接手を下しナンバーを剥ぎ取った場合一人分とします。他者から生贄の権利を譲渡していただくことも可能です。ただしこの場合ナンバー一つで半人分、つまり二人分のナンバーを譲渡していただかないと勝利条件は満たされません。自ら他者の為に生贄になることも可能です。その場合一人分としてカウントされ、生贄となられた方はこちらで保護させていただきます。ですが、よく考えてください。こちらからは少なくとも皆さんを死に追いやるようなことは致しませんが、場合によっては死よりも辛いものが待ち受けているでしょう。ですので、やはりお勧めいたしません」
「……」
淡々と説明は続けられていく。誰もが言葉を失い、ただただ担任教師の言っていることを耳に入れていた。
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