77人が本棚に入れています
本棚に追加
時々,私の両親が時間を見付けては,様子を見にきてくれていた。
ガリガリに痩せ細り意識がハッキリしない私を見て,母親が泣いている姿を何度も見たが,私にはなにもできなかった。
父親が私を入院させようと,主人に話しているのを何度も聞いたが,いつも主人が断っているのを悔しい気持ちで聞いていた。
両親には娘の本当の父親のことを伝えるべきか,主人の暴力を伝えるべきか,いつも悩んでいたが,主人を裏切りその男と関係をもち,子どもまで産んだ後ろめたさがあった。
なにより,両親にこれ以上心配をかけたくなかったのと,主人が私に対して怒り,辛くあたるのは自業自得だと思い,なにも言い出せなかった。
娘がいなくなったのはすべて私が目を離したせいだし,主人はなにも悪いことをしていなかった。悪いのは全部私だった。
すべて私のせいで,知らないとはいえ実の娘じゃない娘を溺愛してくれた主人に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
誰もいないときは,カレンダーに娘がなにをした日なのか,必死に思い出してすべて書き込んだ。
娘が実在したことを忘れて欲しくなかったし,娘との記憶をすべて残しておきたかった。
娘が初めて自分で靴下を履いた日,初めてニンジンを食べた日,そして初めて電話で「もしもし」と言った日を泣きながらカレンダーに書き込んだ。
主人に殴られたときに骨折した指が,おかしな方向を向いて固定されてしまいペンを持ちにくかったが,もはやどうでもよかった。
最初のコメントを投稿しよう!