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娘はお風呂で歌うのが大好きだった。
毎晩ご近所に聞こえるほどの大声で,大好きなアニメの主題歌を一生懸命歌った。
お風呂からあがった後は,私がバスタオルで娘を包み込むようにして拭くのだが,娘にとっては遊びの一部で,大きく拡げたバスタオルに捕まらないように裸で部屋の中を走り回った。
飛び回るように逃げる娘の運動神経に驚かされることがあり,その度に胸が痛んだ。
成長するにしたがい,彼の面影が強く出ていることにも気が付いていた。
そしてそれは,彼のことを知る母親にも指摘された。
運動神経のよさと日本人にしてはやや薄い茶色がかった目,そして長いまつげは彼の特徴でもあり,母親がとくに覚えている彼の特徴でもあった。
ある日,母親から「孫は全然両親に似てないね……。あんたが昔,付き合ってたサッカー部の子に似てるね……」と何気なく言われた時に,私はひどく困惑し必要以上に否定した。
それ以上なにも言ってこなかったが,その時から両親に対しても壁を作ってしまっていた。
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