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聞き慣れた声が聞こえてきて、ギクリと身を縮め恐る恐る声のする方へ目を向けた。
中西だった。
以前言っていたフラダンス教室の帰りだろうか。
首には色鮮やかなレイがかかっている。
タイミングを見計らったような登場に、さすがの矢田も軽く舌打ちをして不機嫌さを露にする。
中西はにこやかな笑みを浮かべながらもあの詮索するような瞳で矢田と斗羽を交互に見つめてきた。
まずい。このままだと本当に明日から噂のネタにされかねない。
斗羽は精一杯笑顔を取り繕うと、慌てて言った。
「僕の目にゴミが入ったのを見てもらってたんです、ね?矢田さん」
チラリと見上げると、眉間の皺がますます深くした矢田が斗羽を射抜くような眼差しで見ていた。
「あらあら、そうだったのね」
怒りを滲ませた矢田の表情は中西の場所からは見えなかったらしい。
中西の詮索するような眼差しが消えて斗羽はホッと胸を撫で下ろす。
「あ!丁度良かったわ。こないだあなたに紹介したいお嬢さん、ここの家の子なのよ~!ちょっと会っていかない?」
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