甘い朝

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「お尻も腰も痛いです」 朝から無体を強いられ、じっとりとねめつけるように言うと二人の男は困ったように笑った。 「一週間会えないからね」 「ついつい」 明日から一週間、二人は仕事の出張でパリに行く。 その予定が決まってから、代わる代わる、時に二人同時に今日まで寝る間も惜しむように求められていた。 二人の底無しの性欲にも驚かされるが、それについていけてる自分の淫蕩さにも呆れている。 「俺たちがいない間に浮気とかしたらダメだからな?」 矢田が意地の悪い笑みを浮かべながら斗羽の耳元で囁く。 「し…しませんよ」 できるわけない。 斗羽には勿体ないくらいの完璧で男らしくてかっこいい二人の男に愛されているのに。 そんな事をしたらそれこそ罰があたって死んでしまうに決まってる。 「そうだな。俺たちが帰ってくるまで一週間、自慰を禁止しようか」 反対側から音成に囁かれて斗羽はぎょっとして目を見開いた。 「いいな、それ」 矢田がその提案に乗る。 こうして二人に独占欲をぶつけられるのは凄く嬉しい。 好きな人に求められる悦びを知ってしまった斗羽は、それがどんな形であろうと受け入れられるような身体にもなった。 もちろん斗羽にも独占欲や嫉妬はある。音成が綺麗な女性と話しているところを想像すれば胸がざわつくし、矢田が居酒屋に来る若い客と肩を組んで楽しげに話す姿を見ると胸が焦げるような気持ちになる。 けれど、それを口にするのは迷いがあった。 自分は欲張りだ。 二人の男を独占して、どちらにも離れていってほしくないと思っている。 本当はこんな関係に二人を追い込んでしまって申し訳ないと思っている。 自分が二人の気持ちだったら、どちらも好きだからという理由なんて許せないと思う。 もしかしたらそんな相手とは付き合わないかもしれない。 少し前までは好きだという気持ちだけあれば良かったのに、時が経てば経つほど自分の身勝手さが表にたち自身を悩ませては明確な答えも出せずズルズルと引き摺るという事を繰り返している。
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