似た者同士のマゾヒスト

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「もっと気楽に考えたらいいんだよ」 乱れたシーツの上で自責の念にかられる斗羽に、要が優しく声をかけてくる。 「だって君は矢田とも別れてるんだし、いずれは音成とも別れるつもりなんだろ?今更身持ちを固くして何を必死に守ろうとしてるの?」 まるで子どもをあやす声音で傷口に塩を塗るような事を言われ、斗羽は掌に爪が食い込むほど握りしめた。 要に抱かれて、自分が断ち切れない想いを引き摺ってグズグズしている事が改めてわかった。 彼らの幸せために、なんて言ってるくせに彼らが自分意外の人と幸せになる事を心の底から喜べていない自分もいる。 胸の内に渦巻く闇のようなもの。 それは見てはいけない斗羽の本心のような気がした。 この感情を出してはいけない。 決して出してはいけない。 「ねぇ、斗羽くん。やっぱり似た者同士、またこうして慰めあわない?」 うなじに伸びた手が襟足を優しく撫でていく。 顔を上げると底のしれない真っ黒な瞳が斗羽を見つめていた。 約束をまんまと破り、無理矢理斗羽を抱いた相手なのにどうしてか許否できない。 要は最後の一押しのように斗羽に囁いた。 「俺なら君の忘れたい事を全部忘れさせてあげるよ」
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