交差する思い

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閉店を知らせるメロディが店内に流れ出すと、長谷川の目の前でお喋りに花を咲かせていた女性がハッとして顔を上げた。 彼女は大学の授業がない日は必ずこうして閉店間際まで店内にいて、長谷川の気を惹こうとしてくる。 正直媚びた態度にうんざりはしているが、日用品など買っていってくれるので無下にもできず、渋々応対しているといった感じだ。 「涼ちゃんまた来るね」 「ありがとうございました」 長い髪を靡かせ、ムスクの香りを振り撒きながら彼女はヒラヒラと手を振り去っていった。 以前の長谷川なら女の子に媚びを売られるのも純粋に嬉しかった。 華奢で柔らかくて抱き心地は最高だと思っていたし、多少我が儘でも馬鹿っぽく振る舞っていても気にならなかったし笑って許せた。 しかし、今はもう彼女たちと話すのが苦痛で仕方ない。 あんな風に媚びを売られると吐気がしてくるし、最近では愛想笑いもしんどいのだ。 そんな風に長谷川を360度変えてしまったのが宮澤斗羽という存在だ。 人の顔色をうかがいながら今まで生きてきたような彼は、頼まれたらNOとは言えないしハッキリ言って地味で平凡で目立たない存在。 しかし、偶然見てしまった斗羽の隠れた性癖に触れてしまってから彼をとても意識するようになってしまったのだ。 気になる存在はいつしか恋心になり、今では彼の全てが魅力的で独占したくてたまらない。 けれど斗羽には完璧な男が二人もいて、百戦錬磨を謳ってきた長谷川もさすがにお手上げ状態だった。
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