4756人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
どこか似た雰囲気を持つ二人は、気の合うもの同士と言われればなるほどそうだろうなと納得できる。
しかし長谷川は通りにいる二人に何となく違和感を感じていた。
親しい友人と一緒にいるにしては斗羽の表情が固すぎるからだ。
普通、友だちや気の合う仲間といる時は自然と笑顔になるものだと思う。
しかし斗羽は笑顔どころか表情を強張らせている。
それに対して男は、斗羽に声をかけるたびに満面の笑みを浮かべていた。
異様なほどの温度差に、得体の知れない不安と胸騒ぎを感じた長谷川は気がつくとスマホを取りに行く事も忘れ、彼らの後を追っていた。
タクシーでも拾われたらどうしようかと思っていたが、二人は駅とは真逆に向かう道を歩いていく。
気づかれないよう十分に距離を取り、彼らの後をつけながら長谷川は行き先を考えていた。
駅から真逆のこの方向は飲食店なども少なく、どちらかというとホテル街のようになってくる。
まさか……
何となく嫌な予感が胸を過ったが、人けのない狭い路地に入った二人が急に足を止めたので慌てて近くにある看板の裏に身を潜めた。
後ろ姿しかわからないが、男は斗羽にまた何かを話しかけているようだ。
次の瞬間、男は斗羽の肩を抱き寄せた。
「………っ!」
長谷川は思わず目を疑った。
弾かれたように顔を上げた斗羽に男の顔が重なったからだ。
男のキスが巧みなのか、唇を解放された斗羽はそれまでとは一変してとろりとした表情に変わっている。
飛び出してあの男を殴り倒してやりたいくらい腹立たしいのに、ショックと動揺で足が凍りついたように動かない。
「………うそ、だろ」
二人が吸い込まれるように入って行ったのはラブホテルだった。
最初のコメントを投稿しよう!