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困惑と憤り。
もって行き場のない何ともいえない感情が沸き上がってくる。
確かに、悔しかった。
自分が選ばれなかった事に何度も疑問を抱いた。
けれど音成なら仕方ないと思ったのも事実だった。
完全に納得したわけではないし、正直に言うと悔しくてたまらないが斗羽が選んだのが音成なら、と思った。
顔を合わせれば憎まれ口ばかり叩くような間柄だが、同じ人を愛し共有して、音成の斗羽に対する真摯な想いは理解していたからだ。
けれど斗羽は全く違う相手と逢瀬を繰り返しているという。
どうしてだ…
斗羽の考えている事がわからない。
「場所…教えてくれ」
行き場のない怒りに僅かに声が震える。
このときはまだ信じていたかった。
長谷川の見間違いや勘違いだと。
そんな事あるわけないと。
しかし、教えられたホテルの出口から要に肩を抱かれて出てきた斗羽の姿を見た瞬間、絶望と怒りに心は滅多うちにされたのだった。
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