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いつからこんなに捻れてしまったんだろうか。
自分は元来争い事が嫌いで、ことなかれ主義だったはずなのに。
矢田は怒り、要は殴られて、気づけば自分が争いの元凶のようになってしまっている。
こんな風になるなんて思っていなかった。
誰も傷つけたくなかったし、誰も悲しんでほしくなかった。
どうしてうまくいかないんだろう。
一緒にいるだけで幸せだと思っていたのに、思いは空回り、結末は斗羽が思っていたものと随分違う。
欲を出してしまったせいだろうか。
それとも完璧で非の打ち所のない二人を同時に好きになってしまった罰なんだろうか。
どちらにしても、もうこの息苦しさに耐えきれそうになかった。
「…………っ…………っ…………」
震える唇から絞り出した声はカサカサと掠れていて上手く言葉にならない。
「………っごめ……なさい……ごめんなさい」
何に対しての謝罪か自分でもわからないほど、色んな事への罪悪感が次から次へと溢れてくる。
痛いくらいに掴まれていた腕が弛められた。
「家に帰ろう」
優しい声色に戻った矢田が抱き締めてくれて、この胸にまた戻ってこれたという安堵と、戻ってもいいのだろうかという迷いに心が揺れる。
「斗羽?お前…すごく熱くないか?」
額に手を宛てられると突然、膝から力が抜けてフニャフニャと地面に崩れ落ちてしまった。
「斗羽!」
矢田の声を聞いたのと、視界が暗くなったのはほぼ同時だった。
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