交差する思い4

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「理由なんてこちらには全く関係ないので。とにかく、早くどうにかしてください」 「秋人は相変わらず淡々としてるなぁ」 まるで他人事のようにのんびりとした口調で答える男……いや、実兄をじろりと睨む。 しかし、兄はやはり全く動じないのだった。 要は元々音成の幼馴染みであるが、秋人の兄である音成春仁(おとなり はるひと)の長年のパートナーでもある。 初めてそれを知った時秋人はまだ中学生だった。 春仁と要がプレイに及んでいる場面を偶然にも目撃してしまった事からはじまった。 成績優秀、スポーツ万能、非の打ち所のない兄の隠された異様な性癖を知った当初、秋人はひどく戸惑った。 その頃の秋人は、まだまだ無知な少年でアブノーマルな世界というものを知らなかったからだ。 だが、おかげで学ぶ事はできた。 人というものは、必ずしも表の顔だけで生きているわけではない。 完璧な人間に見えても、秘密や他人に言えない性癖を隠し持っているのだと知ったのだ。 同時に、多感な時期に目撃してしまったそのシーンは、秋人の心に強烈なインパクトを与えた。 いつしか自分も人を虐げてみたいという加虐欲が生まれはじめ、学生の身のうちは何とか蓋をして抑えていたのだが、そこから解放されるとタガが外れたように男女問わず食い散らかした。 あの頃はまだ若さゆえに特定のパートナーを作ったり、恋愛感情を持つ事に対して興味も沸かなかった。 そんなものは煩わしいだけだし、たとえ恋愛に発展してもいつも相手が根を上げて逃げて行ってしまっていたからだ。 「だけど、秋人にもようやくパートナーができて俺は安心したよ」 「兄さんに心配されていたなんて初めて知りました」 秋人と同じ切れ長の瞳を細めて春仁が笑みを浮かべる。
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