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自分の叫び声で目が覚めた。
額から水滴がつ…と流れ落ちていく。
掌や背中も汗でぐっしょりと濡れていた。
着ているスウェットが肌に張りついて気持ち悪い。
何だかわからないが、酷く恐ろしい夢だった。
内容はよく思い出せないけれど、大切にしていたものと幸せな何かがボロボロと崩れ落ちる夢だった。
どうしてあんな夢……
斗羽はため息を吐くと、起き上がった。
夢から覚めたというのに、胸はざわざわとして落ち着かない。
今の自分は幸せだ。
仕事も順調だし、大切な人もそばにいる。
昨夜だってこのベッドで散々喘がされ骨抜きになるまで愛し合ったのだ。
斗羽はベッドを抜け出すとキッチンへ向かった。
蛇口を捻りコップに水を注ぐと一気に飲み干す。
渇いた身体の隅々に水分が行き渡るとようやく気持ちが落ち着いた気がした。
その時、背後からするりと腕が伸びてきて斗羽の身体をすっぽりと包み込む。
ビクリと肩を震わせるが、すぐに覚えのあるウッディな香りが鼻腔を擽り強張りが綻んだ。
「誰が勝手にベッドから抜け出していいって言った?」
咎めるような甘えるような声に、斗羽の被虐心が刺激される。
昨夜も散々彼に泣かされたというのに、自分の身体はどこまで貪欲なのだろう。
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