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斗羽の母親宮澤まゆみは夫である斗羽の父親と、ここから随分離れた県外の田舎町で暮らしている。
まゆみからしたら姉、斗羽からしたら伯母がいるのだがその伯母一家が家族で海外に引っ越す事になり、持ち家が空き家になると困っていた。
たまたま斗羽の就職先が伯母の家から近いという事になり一軒屋に住む事になったのだが、それから今日まで一度も実家に帰っていなかった事を思い出す。
あんなに休みがあったのに、どうしてだろう?
斗羽はそれが不思議でならなかった。
それに、母親がここにいる事も。
自分が病院にいる事も、だ。
「何でここにいるの」
思いがけない再会に瞠目していると、まゆみが珍しく怖い顔をして斗羽を見つめてきた。
「何でじゃないでしょう?こっちに来てから連絡も殆ど寄越してこないで」
やっぱりその事か、と斗羽はバツが悪そうに肩を竦めてみせた。
「それに、いきなり倒れて病院に運ばれたって聞かされて…っ、もう、本当に心配したんだから」
遂に鼻をすすり涙を零し始めた母親を見て、斗羽はまごつく。
「……っ、ご、ごめん。心配かけるつもりはなかったんだけど…」
謝りながらもまた考える。どうして自分が倒れたのか全く見当がつかない。
何が原因で倒れたのだろう?
疲労?仕事のストレス?
いや、そもそも仕事って何をしていた?
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