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「なんで……?あんな、場所…?」
やはり斗羽にはその意味がさっぱりわからない。
わからないのだが、何故だか妙に胸がざわついてしまい斗羽は思わず目を逸らしてしまった。
「目を逸らすな」
冷然と言い渡されて肩を掴まれる。
いきなり触れられて驚いた斗羽は思わず身体をびくりと震わせた。
触れられた場所が熱くなり、斗羽の心をますます波立たせてくる。
無意識に回避しようとするが矢田の力は想像以上に強く、ビクともしなかった。
「どうしてあんな場所にいた?あそこで何をしていた?」
畳み掛けるように問い詰められても、斗羽は何も答える事ができずただ視線を彷徨わせる事しかできない。
早く言わなければ。
わからない、知らない、覚えていないと。
そうしないと、また苦痛を味わう羽目になる。
もう、あんな風に罪悪感に煩悶するなんて嫌だ。
咄嗟にそんな事が頭を過った。
「なんで、よりによって…あいつなんだ!」
次第に矢田の声が荒くなり、肩を掴まれた手に力が込められていく。
「……つっ…」
痛みに顔を歪めると、音成が矢田の腕を掴み引き剥がそうとしてきた。
「やめろ。傷つけるな」
底冷えするような声色と眼差しに斗羽はまた身体をびくりとさせる。
その強い感情は矢田に向けられているはずなのに、なぜだか自分が責められているような気持ちになった。
「止めるなよ音成、お前だってそう思ってるんだろ?」
「あぁ、彼には聞きたい事だらけだ。だが今聞く事じゃない」
「…俺は今聞かないと気がすまないんだよ、手離せ」
「お前が離せばいいだろ」
二人の間が剣呑な空気になっていく。
思い出せないばかりか、自分が争いの火種になっている事に耐え切れず、斗羽はついに口を開いた。
「っやめてください」
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