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「僕は…一体何をしたんですか…」
斗羽の言葉に二人の動きがぴたりと止まる。
矢田の表情はますます憤怒の形相に変わっていった。
「お前、俺をからかってるのか?」
胸ぐらを掴まれて身体が浮き上がるほど持ち上げられる。
「それを俺に言わせたいのか?」
高圧的な口調で問い詰められて、恐怖に身が竦んだ。
今まで、これほどまでに真っ向から怒りをぶつけられた事が殆どなかったからだ。
けれど当然だ。
自分が悪いのだから。
記憶がないばかりに、他人にこんな行動や発言をさせてしまっているのだ。
また彼の香りが鼻を掠めてなぜだか無性に泣きたくなった。
斗羽は項垂れるとぼそりと呟いた。
「思い出せないんです…自分がどうしてここにいるのか、何があったのか…」
思断った斗羽の言葉に、二人はハッとして顔を見合わせる。
「嘘、だろ」
「…まさか」
唖然とする矢田と音成を前に、斗羽は「ごめんなさい」とか細く謝る事しかできなかった。
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