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暗い路地、 斗羽を見下ろした誰かが「違う!」と言う。
仄暗い顔が近づいてきて、斗羽は思わず掴まれた腕を振り払おうとした。
「逃げるな」
強い力で引き寄せられて、塀に押し付けられる。
斗羽は瞠目したまま正体のわからない誰かを見上げた。
怖いと思うよりも先に、こんな姿を誰かに見られたら相手の立場を悪くしてしまう、そんな危惧で頭がいっぱいになった。
「誰かに見られるかもしれないから」
やんわりと胸を押し返そうとするが、相手は微塵も動こうとしない。
それどころか、大きな手が伸びてきて斗羽の服の上から身体中を弄り始めた。
こんな場所でダメと思っているのに、相手の触れる場所から熱が生まれじんじんと痺れていく。
ここがどんな場所だったか、どうしてダメなのか、思考は曖昧になり、このまま流されてしまいたいという気持ちになっていった。
掴まれた腕はいつの間にか解放されているのに、斗羽は抵抗も忘れてされるがままに熱い吐息を吐く。
これ、好き…
大きな手のひらが身体のあちこちをなぞっていくたびに唇が勝手に解けて、胸が上下する。
「誰に見られても構わない。俺はお前が…」
ハッとして見上げるとそこには長谷川の顔があった。
吐息が触れあうほど顔が間近にあって、斗羽はかあっと顔を赤くさせると思わず長谷川を突き飛ばしていた。
「じゃあ、もうすぐそこなんで」
そう言うと、斗羽は駆け出していた。
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