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しかし、時折ふとした時に微かな違和感を感じるのだ。
手を繋いだ時や肌に触れられた時に。
前から抱きしめられたら背中が、右手を繋いだら左手が。
まるで、前までそこに何かあったかのような錯覚を起こす。
矢田を求めるあまり、自らの欲がみせる幻なのかもしれない。
これ以上欲張ったらバチが当たる。
自分に言い聞かせるのだが、その違和感のようなものはなかなか消えてくれないのだった。
そんなある日のことだった。
斗羽の職場に見知らぬ男が現れた。
「宮澤君、お知り合いだって人が来てるけど…」
パートの女性スタッフに言われて、裏の倉庫の方へ向かうとスーツを着た男が立っていた。
空は雲一つない快晴だというのに傘を持っている。
「知らない奴が訪ねて来たら俺に声かけろよ、絶対だ」
長谷川にはしつこいくらい念を押されていたが、男は特に怪しい様子もなく斗羽はなんの躊躇いもなくその男の元へ歩み寄った。
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