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長谷川のおかしな推測に困っていると、突然クスクスと笑う声が聞こえてきた。
ハッとして、声のする方を見ると一人の男がこちらを見て笑っている。
斗羽は真っ赤になると、慌てて長谷川の囲いから抜け出した。
「いいいらっしゃいませ、お客さま」
何とか営業スマイルを向けて平静を装ってみる。
男はスーツ姿だった。
音成や矢田のような威ある感じではなく、一般的なサラリーマンという感じだ。
「傘が欲しいんだけどどこにあるかな?」
男はまだクスクスと笑いながら訊ねてくる。
「あ…はい、こちらです!」
見られた…というか聞かれた!?
今のは完全に聞かれていたと思う。
酷い失態に顔を真っ赤にしながら額に手を当てると溜め息をついた。
穴があったら入りたい…
「ごめんね、二人があまりにも微笑ましくて…つい笑っちゃって」
傘の場所へ案内していると、男が話しかけてきた。
「し、仕事の話しに夢中になってしまい、お客さまに気づかなくてた、大変申し訳ございませんでした」
わざとらしい言い訳を加えると、ますます声を立てて笑われた。
「大丈夫だよ、俺はそういうのに偏見ないから。若い時はああいうスリルとかが楽しいものだし」
フォローされてますます居たたまれなくなってしまう。
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