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午後からぽつぽつとしていた雨は、帰る頃には本格的に降り始めた。
傘をさしているにも関わらず歩いている間に足元はかなり濡れてしまった。
寂しい気持ちに拍車をかけるような雨と濡れた布の感触に斗羽の気持ちは更に沈む。
夕食の仕度をする気にもならず、コンビニで適当に買い物をすませる。
こんなところ矢田に見られたらきっと怒るだろうな。
彼は常に斗羽の食生活を気にかけてくれている。
元々食が細く、肉づきの悪かった斗羽を自慢の手料理で程好く太らせ、いまでは血色も肌艶も良くなっている。
きっと矢田との関係がなかったら未だに身体はモヤシだったと思う。
二人が斗羽を変えてくれた。
内側も外側も確実に彼らの手によって変えられていってる事がわかる。
それはこの上ない悦びだ。
好きな相手、斗羽の場合二人によってあの手この手で愛されて、心も身体も拓かされていくのは何ともいえない喜悦に溢れている。
それなのに、たまに無性に怖くなる時があるのだ。
それが何に対しての恐怖なのかはっきりとはわからない。
変化していく自分自身になのか、それとも変えてくれる彼らに対してなのか、あるいは別のものに対してなのか。
幸せすぎて怖いというのはこういう気持ちのことをいうんだろう。
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