プロローグ

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あれは、さあさあと雨が降る日だった。 その日秋人は休日で、友だちと映画を観に行く約束をしていた。 待ち合わせ場所に着いていたが、急に約束がキャンセルになり結局一人で映画を観る羽目になった。 映画を観たあとは特に用事もなく予定よりも早めに帰宅する事にした。 弁護士をしている両親はほとんど家には帰ってこない。 月に一度ふらりと帰ってきては、必要な物を抱えて再び出ていってしまう。 幼い頃はそれが寂しくて泣いたりもしたが、そのたびに兄が慰めてくれた。 いつしかそんな生活にも慣れ、中学生になった今では両親が帰らなくても全く気にならなくなっている。 兄がいればいい。 それだけで十分だ。 鍵を開けて家に入ると、見慣れない靴がある事に気づいた。 両親のものでもない。 兄のものでもない。 だけどどこかで見たことがあるような靴。 どこで見ただろう?
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