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どうしてあの人がここにいるんだろう?
じっと見つめていると、その男もこちらを見つめた。
つぶらな瞳には一切の光がなく、底の知れない深さを持っているように見える。
憂いを含んだような重苦しい何かを抱えているような表情に、また胸がざわざわとしていたたまれなくなり慌てて目を逸らした。
モニター越しだから視線が絡むはずないのに。
ガチャリと扉が開く音がして、振り向くと音成が立っていた。
家主が起きてきてくれた安堵が本来なのに、なぜかこの男と音成を引き合わせてはいけない気がしてたまらなくなった。
「…あの…………」
音成はモニターを一瞥すると、ぎゅっと眉根を寄せ、まるで斗羽の事が見えていないかのように足早に玄関から出ていってしまう。
呆気に取られていると、インターホンのスピーカーから唸るような低い声が聴こえてきた。
『今までどこにいた、要(かなめ)』
モニターには腕を掴まれた男が悲愴な面持ちで音成を見つめていた。
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