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開いた扉の先には恰幅のいい女性が満面の笑顔で立っていた。
その笑顔をたとえるとギラギラ照りつける真夏の太陽の下、我が物顔で咲く向日葵だ。
しまった、と思った時はすでに遅く、扉から滑やかな動きで中へ入ってきた。
「こんにちは、お留守かと思っちゃったわ~」
手には回覧板を抱えている。
「こ、んにちは、中西さん…」
思わず顔がひきつってしまい、取り繕ったような笑顔になる。
迂闊だった。
矢田が来るまでこの時間の彼女の出現を予想していたはずなのに、すっかり忘れてしまっていた。
甘い時間を邪魔されただけでなく、これから30分彼女の世間話に付き合わなくてはいけない。
溜め息が出そうになるのを必死に堪えていると、歴史を刻んた皺の奥にある眼が何かを捉えたように光った。
「あら?あらあらあら、音成さんとこのイケメン秘書さんじゃない?」
その眼差しは斗羽の背後に注がれていた。
「秘書さんがどうして斗羽君のお家にいるのかしら…」
背後にいる矢田と斗羽の顔を交互に見比べると、何かを探るような
顔をしている。
バレた…!?
さぁーっと血の気が引いていく感じがして、心臓がドクドクと駆け足になる。
この口から生まれてきたような中西にバレてしまえば、近所中…いや翌日にはそれよりもっと外に広まってしまう。
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