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大丈夫。
普段、矢田は秘書を勤めていくらいだからいくらでもうまくかわすスキルを持っているはずだ。
真実を話すわけがない。
もしも本当の事を言ったとして、矢田にも音成にも何のメリットにもならない。
それどころか逆に自分の首をしめるだけだ。
そんなリスクを背負ってまで、この爛れた関係を中西に話すわけがない。
そう思って、少しだけ胸が痛んだ。
誰にでも受け入れられるような関係じゃない事はわかっている。
斗羽と音成と矢田の関係は、世間からしたら背徳そのものであり、一般的に受け入れられるものではないのだから。
それはわかっているはずなのに、矢田の言葉を聞くのが少しだけ怖い。
中西は一見するとにこやかに笑っているようだが詮索するような眼差しで矢田をじっと見つめている。
「残念ながら、彼女はいないんですよ」
矢田の言葉にホッとするも、どこかでやっぱり…という昏い気持ちが足元に広がる。
「本当に!?あなたみたいなイケメンさんに彼女がいないなんておばちゃんビックリだわ!私があと20歳若かったら立候補してるのに~!」
中西は目を丸くさせながら、まるで女子高生のように黄色い声を上げた。
「そんな、とんでもないです」
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