メランコリーなマゾヒスト

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「ほんと、音成さんもあなたも素敵じゃな~い。あ!そうだわ、良かったら私の知り合いのお嬢さん紹介しましょうか?年齢は少し年下かもしれないけれど、美人で器量のいいお嬢さんだからピッタリだと思うの」 謙遜する矢田に中西は畳み掛けるように提案してくる。 矢田に女性を紹介するつもりらしい。 昏い気持ちにとどめを刺すかのような中西の言葉に斗羽の胸は抉られたような気がした。 「ありがとうございます。いずれ、ぜひ」 背後から聴こえる矢田の答えは至極当然のものだった。 そうだ、これが世の中を熟知した大人の対応なのだ。 他にどう言えばいい? 自分が矢田でもそう答えるはずだ。 そう何度も言い聞かせるのに、ズキズキと痛む胸と、割りきれない気持ちに翻弄されてしまう。 中西は矢田に紹介したい女性の長所を散々話すと、最後に思い出したかのように斗羽の手に回覧板を渡し足取り軽く去っていった。 いつもなら中西が出て行った後はホッとするのだが、今日は彼女の気配がいつまでも消えず心が落ち着かない。 煮えきらない思いを鎮めるように唇を噛み締めていると、不意に背後から抱きすくめられた。
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