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「………続き、する?」
うなじに唇が落とされ、シャツの裾からそっと手が侵入してくる。
ハッとして思わず身体を屈めると、咄嗟に矢田の腕から逃げてしまった。
「……斗羽ちゃん?」
振り返ると矢田が困惑した表情で斗羽を見ている。
しまった。
こんな態度とるつもりじゃなかったのに。
あからさまに避けてしまったのに、どうしてそんな行動をしてしまったのか自分の行動に説明をつける事ができない。
居たたまれなくなり思わずさっと顔を逸らすと唇を噛みしめた。
こんな態度をとられたら、さすがの矢田でも不審に思うはず。
理由を訊かれたらどう答えればいいだろう。
頭の中は、パニックを起こしおもちゃ箱をひっくり返したようになっている。
だが、問い詰められる事を覚悟していた斗羽に投げかけられた矢田の言葉は意外なものだった。
「………ごめん、そんな気分じゃなかったよな」
弾かれたように顔を上げると、矢田は眉根を下げ困ったように笑っていた。
どうしてと責められてもいいような行動をしたというのに、斗羽を問い詰めるどころか謝ってくる矢田の優しさに胸が締め付けられる。
「ちが…あの、矢田さんのせいじゃ…ないんです!」
慌ててそう言うと、今度はその大きな手で頭をくしゃくしゃと撫でられた。
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