嘘つきなマゾヒスト

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矢田のマンションに着くとまた腕を掴まれ引き摺られるようにしてバスルームへと連れてこられた。 スイッチが切り変われば豹変はするが、矢田はこれまで斗羽の嫌がるような事は決してしてこなかった。 ましてや、こんな冷ややかな視線を投げかけたりはしてこなかった。 服のまま浴室に放り込まれると、素早く両手を纏められシャワーヘッドに固定された。 いつもよりキツい拘束に斗羽の表情が不安と恐怖に染まる。 すると今度は乱暴な手つきでベルトを外され、下着ごと衣服を剥ぎ取られた。 「あっ……何っ…」 羞恥でカァッと熱くなる。 抵抗したくとも両手を縛められているため敵わない。 矢田はみっともなく下肢を曝した斗羽をじっと見据えると、何も言わずにバスルームから出ていった。 何をされるのだろうか。 あんな怒りに満ちた矢田がいつものように斗羽を優しく抱くわけがない。 それだけは明確だった。 ほどなくして矢田が戻ってきた。 そのまま放置されるのではないかと不安だった斗羽は、その姿に少しホッとする。 しかし、矢田の手にあるものを見て心中穏やかではいられなくなった。 矢田の手に握られていたのはグリセリンと書かれた大きめのボトルと、ゴム性の器具だった。 真ん中には無花果の形をしたポンプのようなものがあり、その両側には細長いチューブのようなものがついている。 浣腸器具だ…… その器具の使い道に斗羽は瞠目した。 まさかそれを斗羽に使うつもりなのだろうか? 矢田は洗面器に湯をはると、そこにグリセリンを流し込む。 斗羽の身体は勝手にガクガクと震え始めた。 「……いや、いやっ…矢田さ…」 震える声で必死に訴えるが、矢田はまるで聞こえていないかのように淡々と作業を進めていく。 器具のチューブの片方の先をグリセリン液の洗面器に入れ真ん中のポンプで吸い上げると、反対側の先端についたプラスチックのノズルからグリセリン液が噴き出した。
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