嘘つきなマゾヒスト

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怖い顔で凄まれて、斗羽は言葉を詰まらせた。 言ってしまいたい。 本当は何度も心が挫けそうになっている。 建前なんて放り投げてその胸に泣いて飛び込みたい。 矢田さんが好き。僕だけを見ていてほしい。誰にもとられたくない。 そう言えたらどれだけ楽だろう。 泣いて謝って縋ったら、いつものように抱いてくれるだろうか。 許してくれるだろうか。 きっと彼は許すだろう。 矢田はいつだって優しくて包容力があって寛大なのだ。 けれどもう決めたのだ。 そんな矢田の将来のために、自分は身を引かなくてはならないと。 彼にはもっと自分に相応しい人を選んで、普通の家庭を築いてほしい。 幸せになってほしい。 だからたとえ矢田に憎まれても絶対に覆さない。 肉体が壊れても、だ。 耐えればいい。 これまでいくつもの自縄自縛を乗り越えてきたじゃないか。 開きかけた唇きゅっと結ぶとその視線から逃れるように顔を逸らした。 「そうか……やっぱり腹ん中に手ぇ入れて引き摺り出すしかねぇんだな」 斗羽の態度に矢田は低く唸ると、手許にあったポンプを圧した。 後孔に埋められたチューブの先端から、ぬるい液体がびゅるびゅると噴き出され斗羽の内側をあっという間に満たしていく。 「ひっ……いっ、いやっ…ううっ」 強制的に満たされていく腹部に酷い違和感を感じて、斗羽は懸命に身を捩った。
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